雷電 閂 -カンヌキ- IPA 1

 長野県は東御市のクラフトビールメーカー、OH!LA!HO BEER(オラホビール)の雷電 閂 -カンヌキ- IPAを飲んでみよう。

 雷電とは伝説的相撲取りであるあの雷電のことだが、その出身が長野県東御市なのだそうな。地元の英雄と、その禁じ手のひとつとされる「閂(カンヌキ)」をテーマにしつつ、未来を感じさせるサイバーパンク的な要素も盛り込んだというユニークなビールである。

 原材料は麦芽とホップ。度数は6%。公式サイトによればIBU(苦さ指数)は63とのこと。

 グラスに注いでいると、その段階から鮮烈な爽やかさと甘さを有した柑橘の香りが匂い立つ。色合いはやや淡めの明るい金色。泡は軽やかながら、適度な粘度も有している。

雷電 閂 -カンヌキ- IPA 2

 さていこう、グビリと。まずはIPAらしいガツンとした苦味が口内を打つが、同時にその苦味と同じくらい濃いマスカットの甘さも広がる。

 グレープフルーツではなくマスカットを感じるというのは、この手のビールにしては稀有かもしれない。苦味と甘み&フルーティさが、競い合うように前へ出てくる。

 どこかとろりとしたコクもしっかりとあり、舌を刺激するスパイス感もある。ベースの部分にはこれも濃い麦の旨みがどっしりと鎮座している。

 各々の要素がそれぞれ存在感を主張するこの味わいは、なるほどサイバーパンク的なカオス。だがそのカオスが、悪くない。おもしろい。

 エキセントリックなパッケージを見ながら考察する。さまざまな色の線が混じり合った模様。黄色は麦芽の旨みだろう。紫は苦味で、ピンクっぽい赤は甘みであろうか。濃いめの赤はスパイス感、白は泡とそこに含まれるコクということかもしれない。

 それら主張の強い味の要素が混沌と混じり合い、伝説の力士の伝説の禁じ手を思わせる力強い味わいとして、最終的にはまとまっている。そしてまとまったうえで飲み手を襲う。

 ガツンとした―――いやガツンを超えてドカンとした、強烈な一撃を喰らったような刺激を味わえる、そんなビールではないかと思う。