ムーチョ・アロハ パシフィックスタイルピルス1

 前回に引き続き輸入食品店で見かけた、ハワイのサーファー醸造家によるクラフトビールブランド、ムーチョ・アロハのビールを飲みたい。

 今回のはパシフィックスタイル ピルス。PILS(ピルス)はドイツ流のピルスナービールのことで、日本で一般的に売られているラガービールがこのタイプとなる。その太平洋スタイルというわけだ。いきいきした麦芽の香りと爽快さが特徴とのこと。

 原材料は麦芽とホップ。度数は5.2%。色は濃いめのアンバーゴールド。わずかに金色がかった泡は、やや荒めだが粘度があって泡持ちはいい。

 その泡をまず啜る。ねっとりとしたクリーミーさの中に柑橘の酸味が香る。

 アンバーゴールドの液の方をグビリと。酸味と甘み、それとともにある柑橘香。それらより一歩程度後ろに軽やかな麦の旨み―――バランスの良い、ピルスナーらしい味わいだが、センターを張っているのはフルーティな酸味かな。

ムーチョ・アロハ パシフィックスタイルピルス2

 苦味に関しては控えめで、甘みや旨みとまじわりちょっとしたスパイス感のように感じられる。

 2口目は泡も液もまとめて、大胆にガブリといってみた。するとこれが旨い。泡のねっとり+こってり感と、フルーティなピルスナーの味が混じり合い、なんとも濃厚で贅沢な味わいを生み出している。

 南国の様々な野菜や果物を用い、フルーティでさっぱりとした味付けをしているものの、メインにはこってりとした脂身を使用した肉料理―――そんなイメージを想起させる。

 この感触はなかなかに見事な個性だ。こんなにこってり・ねっとりしたラガー(ピルスナー)というのは、他にはないのではないか。

 ムーチョ・アロハはベルギービールに学び、酵母が持つ力を重視した方針をとっている。その酵母のパワーをピルスナーに使ったら―――なるほどこういう味わいになるのか。

 酵母が生み出すねっとりとした泡は持ちがいいとさきほど書いたが、持ちがいいを超えているのかもしれない。まったく消えない。液のほうを飲みおわってもグラスの底に残り、それを啜ってみるとなんだか生クリームのような感じがした。ビール風味のおいしい生クリームだ。

 飲むときは気軽に、大胆に、ガブリといこう。それでこそ、このビールの贅沢で奥深い味わいを堪能できる。