ドラフトギネス – アイルランド伝統の黒ビール。缶の中に泡を作る球体あり!?
ギネスビールは創業1759年。265年の歴史を誇る老舗で、アイルランドの伝統のひとつといってもいいだろう。
ドラフトギネスはその主要製品のひとつであり、上面発酵のスタウトタイプ―――つまりはナッツやコーヒー、チョコレート系の香りを有する黒ビールだ。
原材料は麦芽、ホップ、大麦。度数は4.5%。
特徴的なのは「缶内にフローティング・ウィジェットというクリーミィな泡を作り出す球体のカプセルが入って」いること。大きめのグラスにできれば全量そそぎ、約2分待ってから飲むと良いらしい(缶の説明文参照)。
注いでみてちょっとびっくり。注ぎ口から流れ出てくるその段階から、ビールは極めてきめ細やかなコーヒーベージュの泡を有しており、最初はカフェオレが出てきたのかと思った。
グラスに注いだ後も、ビールの中の泡はすぐには上にはのぼらない。ゆっくりと時間をかけて上昇し、上の方に溜まってきて、写真のような姿になる。
漂う香りは、ほのかなコーヒーと焦げたシュガー。飲んでみよう。
泡は外見に違わずクリーミー。というよりなかばクリームである。しっかりと深煎りされたコーヒーの風味。と同時にあるほんのりとした甘み。
その泡の向こうにある漆黒のビール本体は意外とあっさり―――と思わせて、すぐにガツンとくる苦味と酸味が展開される。
その味わいの中にあるのは、こんがりと焦げたコーヒー、クルミ、カカオ。酸味はカカオを思わせる。
余韻として後に残るのは苦味。様々な要素が融合しあった、スタウトビールの渋く沁みる苦みだ。
泡の甘いクリーミーさと、味わいの渋さ。そのコントラストはおもしろく、感覚が(いい意味で)困惑する。味わいの渋さには、近代のビールにはない、どこか古典的で深いものを感じる。
他との比較、相対性でいうならば、必ずしも飲みやすいビールではないかもしれない。だがそんな部分に、アイルランドの、過酷な北国の自然の、人の、力強さを想起する。
古い記憶を呼び起こすと、ギネスのビールを初めて飲んだのはどこかの渋いバーであった様に思う。確かに静かなバー的な環境で、この味わいとじっくり向き合いながら伸びたいビールだなと思う。