Dr.KONG 1080

 地元、山口の地ビールを飲むとしよう。

 Dr.KONG BREWINGは日本酒「貴」で名高い永山本家酒造場のクラフトビールブランド。麦芽やホップにプラスして、様々な材料を積極的に加えた、かなり個性的なビールを作っているらしい。

 そのひとつ1080(テンエイティ)は「和(輪)を届けるをコンセプトに、山田錦、酒粕、ほうじ茶の3つの要素を原料とした黒ビール」とのこと。日本酒酒蔵らしい要素がたんまり入ったビールのようだ。

 原材料は麦芽、山田錦、ラクトース、ほうじ茶、酒粕、ホップ。度数は4%。

 原材料というのは基本多い順に並んでいるはずだから、山田錦・ラクトース・ほうじ茶・酒粕は、ホップよりも多量に使用されており、それらの存在は隠し味程度のものではないと想像される。

 ラクトース(乳糖)というのも興味深い。しかも順番は前から3番目である。どんな味わいをもたらすのだろう。

 色合いは黒ビールにしてはやや淡めかも知れない。非常に濃い琥珀色といった感もある。泡はもこもこと立ちやすく、粘度もあるガッツリクリーミータイプ。

 さて一口飲んでびっくり。和菓子だ。和菓子を感じる。

 これはほうじ茶からくるものだろうか。抹茶菓子を食べたときと同じあの味がする。

 しかしただのお茶、抹茶ではなく和菓子ということは、そう思わせる味わいがあるということだ。それを探っていきたい。

 菓子ということは甘さがあるということ。そう、甘い。これはビールの、特に黒ビールの甘さではある。でもそれだけではない。米を感じる。米、餅、日本酒を感じさせるのだ。これは山田錦や酒粕に由来するものだろうか。

 ラクトースすなわち乳糖に関しても考察したい。お菓子的な甘さとミルキーさ―――そういったものを高めるのに貢献しているのかも知れない。

 全面に来る印象が「甘い抹茶系の和菓子」であるにも関わらず、ちゃんとビールであるというのも何気にすごい。ビールとは異なるリキュールやカクテルとは感じない。あくまで「甘い抹茶系の和菓子」の味がする「ビール」だと感じられる。

 いや、こりゃおもしろいね。クラフトビールや地ビールというものは、こういうガッツリとした個性に出会えるのが魅力だ。